| EeePC 4G-X (701) |
| 2008/07/23 21:28:59, Category: 1.PC, Comment: 0 |
昨今巷で話題のモバイルパソコン、ASUSのEeePCである。ただし今月発売された最新モデルの901ではなく、その前の701。以前からサーバ用に消費電力の低いマシンがほしいと思っていたところに、このEeePCが発売され、価格が安いわりにCPU能力もさほど低くはないことから、先月カラーモデル(4G-XU)のグリーンを購入して試用をはじめた。今月に入ってさらに値下がりし、そのモバイル用途への可能性も試したくなり（そもそもこれが本来の用途だが）、表記モデルを追加購入した。ここでは、表記モデル(4G-X)とカラーモデル(4G-XU)をあわせて感想を述べる。ちなみに比較対象は当方が長年愛用のFMV-LOOX S73Aである。・バッテリー駆動時間と発熱
のっけから厳しい話題ではある。EeePCおよびその派生マシンは、いずれも値段の安さが売りなので、バッテリーの持ちは総じて悪い傾向にある（EeePCの最新モデル901だけは違うようだが）。この初代EeePCは、4G-Xで3.2時間、4G-XUで3.0時間が公称値。LOOXが標準バッテリーで4.5時間、大容量バッテリーで9.0時間もつのに比べると、なんとも短い。出張に持っていくならACアダプターが必須である。しかも新幹線一本ならまだしも、それ以上は持ちそうに無い。LOOXならば大容量バッテリー１本で日帰りはもちろん、うまくすれば１泊でも持ったことを考えると、かなり使い勝手が悪い。
実際の容量で比較してみよう。EeePC 4G-Xの場合 7.4V x 5200mAh = 約40Wh の容量があるのだが、これはLOOXの大容量バッテリ（10.8V x 3800mAh = 約41Wh）とほぼ同じである。これでLOOXの9時間に対し、3.2時間しか持たないとは、ほぼ３倍の消費電力。かなりの大食いだ。まあその分、処理能力が高いのだから仕方が無い。LOOXはCPUがTransmetaのCrusoeなので、何をさせるにももっさり、のろのろ。メインメモリも256MBしかない。それでいてOSは同じWindows XP Home Edition なのだから、使用感の違いは明白である。なにより当方がよく利用するソフトの動作可否が違う。これが決定的だ。
熱に関しては言わずもがな。パソコンの場合、物を運んだりする仕事をするわけじゃないので、消費した電力は全て熱として放出される。ノートパソコンの場合、画面光と言うエネルギー放出もあるが、全体に占める割合は低いだろう。よって、LOOXのおよそ３倍の発熱と言えるのではないだろうか。実際、LOOXでは底面がちょっと熱くなるぐらいで済むところが、EeePCではキーボード面全体が高温化して長時間手を置いていると痛くなってくる。文書作成がメインの自分にはちょっと厳しい状況だ。まあ、これは昨今のモバイルパソコンではすべて同じような状況なので致し方ない。多少動作がもっさりでもかまわないから、もう少し発熱しないようにしてもらえないだろうか（その結果として、バッテリー駆動時間も延びるだろうし）。
・キーボード
キーボードの評価は個人の好みや慣れにかなり左右される。よって以下はあくまで当方の個人的な見解であることに留意してほしい。
当方の作業はプログラミングや文書作成が多い。よってキーボードは重要なのだが、一方で、構造はメカニカルでもメンブレンでもパンタグラフでも気にならず、ストロークやキーピッチの違いも割とすぐ慣れる。問題は配列である。
当方、日本語を含む文書を作成中に「半角／全角」キーを多用するほか、パワーポイントで図形に文字を入れるためにF2キーの多用もする。当方、通常はデスクトップを使い、ときどきノート（モバイル）パソコンを使うので、これらのキーの相対位置がデスクトップと異なるとかなりストレスがたまる。EeePCをはじめ、多くのモバイルパソコンでは、「半角／全角」キーがESCキーとF1キーの間に移動させられており、その影響でF2キーも右にずれている。正直これはつらい。
ちなみにLOOX Sは「１」キーの左に「半角／全角」キーがあるので問題なかった。その後継と目される LOOX P も同様に「１」キーの左に「半角／全角」キーがある。だがモバイルパソコン全体を見ると、これは少数派のようだ。より大きい Let's Note などでもESCキーとF1キーの間に「半角／全角」キーがある。
やむなく最近はスペースキー右の「前候補／変換」キーをIME-ON/OFFに割り当てて使おうと試み始めたのだが、なんとEeePCはこのキーが省略されている（Fnキー＋「無変換」キーで代用）。なんだこの外しっぷりは・・・。どうやら、以前 LOOX 故障時に代打として購入した InterLink MP-XP741 と同様に、緊急用にしか使えなさそうである（XP741はVictor製だが、実はASUSのOEMなので、当然の帰結かも）。
・画面
画面は７インチと小さい（単価の安いカーナビ用を流用したという噂である）。サイズもそうだが、解像度も800x480と、あまり聞かない小ささである。LOOX の 1024x600 でさえ狭く感じることがあったので、800x480はさすがに常時狭い。特に縦の解像度は厳しく、WindowsのプロパティすらOKボタンが見えなくなることもしばしば。まあ、そういう時は暫定的に800x600モードにして、画面をスクロールさせれば何とかなるが。
一方で、当方の文書作成は主にテキストエディタで行うので、800x480でも何とか実用レベルではある。ただ、文書作成にはWebで情報収集したり、辞書を引いたりする作業も必要なので、そのような複数ウィンドウを駆使する仕事ではやはりつらくなる。やはり最低でも1024x600は欲しいところだ。
かといって、あまりにドットが小さすぎるのは困る。当方体が大きいので、キーボードに両手を置く姿勢では、画面がかなり遠くなるからだ。いくら解像度が高くても、文字が見えなきゃ意味が無い。そうすると７インチで800x480と言うのはぎりぎりかも。1024x600にするなら、LOOX同様8.9インチはほしい。いや、もう少し大きくてもよい（そういった意味で、10インチで1024x600のMSI U100は期待できる・・・が、今は入手性が格段に悪い、というか手に入らない）。
・ポインティングデバイス
タッチパッドであるが、かなり小さくて、操作性はあまりよくない。右端および下端をなぞることでスクロール機能が使えるのだが、これの反応もよくない（よって今は切っている）。個人的に、マウスをチョコチョコ動かす癖があるので、タップでクリック動作というのも邪魔である（やはりこれも今は切ってある）。いずれにせよ外部マウスがあった方がよいだろう。その点、標準で小型の光学マウスが付属するのは感心できる。ただし有線だが・・・。モバイル性を考えると無線が良い。いや、真にモバイル性を追求するなら、やはり内蔵デバイスで何とかするべきだろう。
個人的にはタッチパッドよりもスティック式（いわゆるトラックポイント）がよい。指をホームポジションからほとんど動かさずに済むからだ。画面のタッチパネルというのも手だが、これはOSやアプリケーションの出来（対応具合）にかなり左右される。かつて InterTop の Windows CE ではかなり重宝したが、Windwos XP や Vista ではどうだろうか・・・。
・インターフェース類
無線LAN(.11b/g)と有線LAN(100Base-T)を内蔵、これはもはやあたりまえだろう(LOOX S73A の時代は違ったが)。
USB は 2.0対応で、右に２ポート、左に１ポートと言う振り分けは、かなり使い勝手がいい。ただし当方の使い方だと、USBフラッシュメモリと無線マウス以外に挿すものは無い。デスクトップ代わりに使うなら、外付けHDDを接続すると言うのもありだろう（2.0対応だから速度も問題ない）。
SDカードスロットが、カードが全部収まる設計と言うのも、入れっぱなしで持ち歩くには都合が良い。個人データはいつでも取り出せるメディアに入れておくほうが安心できる。
アナログRGB出力(D-Sub 15pin)も、プレゼンする機会が（まれにだが）ある身としてはありがたい。液晶モニタに出力してデスクトップ代わりに使うことも出来る。
CFとかPCカードのスロットが無いのは、通信カードなどの拡張性に乏しいが、当方の利用方法ではあまり問題にはならない。出張時はほとんど通信しないし、もし必要なら無線LANスポットを使うからだ。USB接続ケーブルで携帯電話につなぐと言う手もある。
総じて、当方の用途では、過不足無いレベルである。
・騒音
冷却ファンがあるので、全く無音ではない。深夜の書斎や寝室では耳につくだろう（他に騒音源が全く無いものとして）。ただし、他にデスクトップパソコンがある場合には、そうそう気にならないレベルだし、図書館や会議では全く気づかないだろう。排気口が左側面中央なので、たまに左手を置いたときに排気の熱風が気になるかもしれない。
・バッテリー残量について
Windowsでバッテリー残量を確認すると、10%単位でしか減っていかない。20%のつぎは10%、そしてすぐにサスペンドである。稼働時間の残り予想も表示されない。これはかなり使い勝手が悪い。外で長く使うには予備バッテリー必須といえるが、サスペンドになった場合、バッテリーを抜くと切れてしまう（はずな）ので、実は交換もままならない。これがLOOXならば休止状態にすればいいのだが、Cドライブがフラッシュメモリで容量も少ないEeePCでは躊躇する。
「電源管理」も使い勝手が悪い。警告などの設定がバッテリー残量10%未満に変更出来ないのだ。デフォルトでは10%で警告、5%でサスペンドなのだが、いざ手動で変更を試みると、設定バーが10%未満に進まなくなる（10%未満に持っていっても、強制的に10%に戻される）。これは何とかならないものか。やむなく、今は10%で警告、サスペンドは無しにしている。この状態で警告後も使いつづけると、7%という表示も見られるが、その後ほどなくして電源が落ちるようだ。
よってバッテリーでの使い方としては、残り10%の警告が出たら、全てのアプリケーションを保存・終了して、シャットダウンするほうが良いだろう（フラッシュメモリなので、HDDのように回転でバッテリーを消耗することがないし）。その後、予備バッテリーに交換して再起動。今回当方の手元には、4G-Xと4G-XUの二つのバッテリーがあるので、しばらくはこれで試用していた（4G-XUのほうはサーバとして使ってるので、バッテリーが要らない。まあ、自己UPSとしても使えるが）。
・バッテリー駆動時間の実際
バッテリー駆動時間は、カタログスペックと実際とでは異なるのが通例である。また、そのときの利用状況にもかなり左右される。よって自分自身で試してみた。
まず、4G-XUのバッテリーを4G-XUで満充電し、4G-Xで試用してみた。容量は4G-Xよりも若干少ない4400mAh。4G-XUでの公称値は3.0時間。内蔵カメラと無線LANはオフ。起動後、有線LANを接続して作業用データをダウンロード。有線LANを外してデータの編集作業を継続。画面の明るさは中間よりやや明るいほう（職場だったので室内とはいえかなり明るいため）。これで残り10%の警告が出るまで約３時間。ほぼ公称どおりか。
データを保存してシャットダウン。バッテリーを4G-Xのものに交換（予め4G-Xで満充電しておいた）。起動してデータ編集作業を継続。残り10%の警告が出るまで約３時間半。意外と持つ。有線LANを接続し、データをアップロードして終了、シャットダウン。
以上、当方の使い方では、ほぼカタログ値どおり、３時間＋３時間半の合計６時間半駆動できた。
なお、4G-Xの電源管理では、オリジナルのバッテリーも、4G-XUのバッテリーも、ともに型番が701と表示された。4G-Xのバッテリーは確かに型番が701となっているのだが、4G-XUのバッテリーは700となっている。この点で、4G-Xは接続されているバッテリーを全て701と認識するように作られているようだ。700のバッテリーは容量が701よりも少ないので、もし4G-Xで充電すると過充電になる恐れがある。十分注意していただきたい（当方で試した限りでは大丈夫だったが、完全に自己責任でお願いしたい）。
・音質
内蔵スピーカーは液晶画面の左右にある。７インチと小さ目の画面を採用したおかげで、ここのスペースに余裕があることを活用したものだ。動画の視聴には都合が良い。なお、明るいところでよく見ると、スピーカーの穴が左右で完全に対称ではなく、右はより外側にずれている。これは、内部にカメラや無線LANなどの配線を通すためかも。
音質はあからさまに小型スピーカーのものであるが、「音が鳴っている事を確認できる」以上のものはある。低音は聞こえないが、低音があることが予想できる感じがあり、一度ちゃんとした環境で聴いたことのある音楽なら十分乗れるだろう。また、中高音はよく出ているので、ボーカル音楽はけっこう聴ける感じがする。スピーカー周りを手で囲むと、音質が良くなる（ような気がする。少なくとも音質はかなり変化する）。
LOOX やその他モバイルパソコンでは、超小型のスピーカーしかなく（ものによってはモノラルのこともある）、高音しか聞こえないので、まさに「音が鳴っている事を確認できる」レベルでしかないことを考えると、がんばってるほうだと思う。
ただ、旅先で手持ちの映画を鑑賞するには外付けのDVDドライブが必要になるし、驚速DVDでハードディスクに入れようにも容量が足りない。ストリーミング配信（YouTubeやニコニコ動画）ぐらいしか最適な用途が無いのが痛し痒し。
以上、いろいろ書いたが、結論として LOOX の代替にはまだまだと感じた。当方の判断基準として、
・LOOX S73A に勝っている点
-
処理能力が高い(CPU、メモリ、グラフィック)
スピーカーがなんとか実用レベル
USB 2.0 に対応、左右計３ポート
有線LAN(100Base-T)を内蔵
アナログRGB出力を通常コネクタで装備
補助記憶がフラッシュメモリで衝撃に強い
SDHCカードスロットを内蔵、しかも全部隠れる
-
キーボード配列が変則的（半角／全角キーと前候補／変換キー）
タッチパッドで使いにくい
発熱が大きい・バッテリー駆動時間が短い
画面が小さい・狭い
バッテリー駆動管理が難しい
補助記憶容量が少ない
ＣＦ／ＰＣカードスロットが無い
現段階では、MSI Wind U100 に期待しているが、発熱・駆動時間、タッチパッド、といった問題のほか、現実に購入できないと言う障害が大きい。悩みどころ。
(2008/7/26)その他、思いついた細かなこと：電源ボタンの反応が遅い。ボタンを押してから、電源ランプや画面が出るまで２秒ぐらいかかる。一瞬、ちゃんと押せていなかったのかと思い、もう一度押しそうになる。慣れればどうってことないのだろうが、できれば改善してほしいと思う。